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約束の場所へ

  第一章 無口なあの仔



タッタッタッタッ




「・・・・・!」




午前8時頃、太陽がさんさんと煌めく中、
ブレザー姿の女の子が初夏の風にのせて
髪をなびかせながら駆け寄ってくると、
僕にノートを手渡す。


そのノートには、



『おはよう!今日も暑いね』



と丸っこい小さな文字で綴られていた。



これが彼女なりの挨拶なのだ。




ぼくの彼女 朝倉乙葉(アサクラオトハ)は声が出ない。




「失声症」というものらしいが、僕は彼女に
詳しく聞こうとはしなかった。




中学3年生の夏が始まった頃
彼女は僕の学校へと転校してきた。



くるりとした大きな目


サラサラとした長い髪


白くスベスベな肌をした彼女の第一印象は
見た目とは裏腹に 無愛想 



言葉通り口数が少ない



と言うよりも会話をしたことが無かったからだ




挨拶も無言で、話しかけられても軽い会釈をするだけ、
クラスの女子とも話そうとしなかったためだ。



そんな乙葉をよく思わない輩も現れ始めた




「何か調子のってない?」


「感じ悪いよね」




そんな女子たちの会話をたまに耳にする
事があったが



イタズラや、いじめなど
特に目に見えるものは無かったため聞き流していた




それから数日がたった ある日の放課後ーー




部活終わりの帰り道
スポーツタオルを首にかけ、まだ熱をもった
体のまま家を目指す



時計の針は7時をまわっていたが 太陽は
沈んでおらず、辺りは比較的に明るかった。



そこで彼女を見付けた。


それも見知らぬ2人の男と一緒に



その子が嫌がっている様子が見てとれる。



「今日パチスロで馬鹿勝ちしたから、俺ら
超リッチなんだよね」


「叙々苑行こうよ」



手をとられまいと抵抗する乙葉を見た途端



僕は身体が勝手に動いていた。



「おい・・・・・!」



僕は乙葉と男達の間に割って入る



「兄ちゃん・・・・・何?」



長身の男は、眉をひそめ僕を睨みつける。



「・・・・・そのこは俺の彼女です」



瞬間、男の拳が僕の頬をとらえ、僕は地面に
倒れこんだ。



ジンジンと痛む頬を抑えながら、僕もその
男達を睨み返す。



「彼女には手を出すな・・・・・」



直後、男の手が微かに動いたかと思うと
僕は地面に伏し、薄れ行く意識の中で
彼女が駆け寄ってくるのを最後に目の前は
真っ暗になった。




僕が気付いた時に、その男達はいなかったが
側で目を真っ赤に腫らして泣く乙葉がいた。




彼女の口はパクパクと確かに動いているが
声が出ていない。



それほど怖かったのだろうか。



それとも僕の耳の鼓膜が破れたのだろうか



地面から上体を起こし、彼女に問いかける




「・・・・・大丈夫?」



その言葉にハッとしたのか
カバンからメモ帳を取り出した彼女はスラスラと
ペンを走らせた。




『ありがとう』





・・・・・ん?



ポカンとした僕を見て彼女はまたペンを走らせた




『ごめんなさい』








『私 声が出ないから』




僕は頭の中で全てが繋がった気がした。




ーーそして





彼女を見つけると、
ついつい目で追ってしまう自分の気持ちに気付いた



僕が学食の時、食堂の隅の席に座り昼食をとる彼女



大量の持ちきれないほどのプリントを抱え、職員室
からよろけながらも出てくる彼女



彼女が転校してくるまで、教頭先生のやっていた
校庭の花壇の水やりと草むしりをする姿を何度も
見てきた



部活中 その姿が目から離れず、よそ見していた
僕はコーチに怒鳴られた事もある




共通して彼女はいつも一人だった



そんな姿を見ると、胸のどこかがズキッと痛んだ




それから僕らは並列して帰路につく



無言が痛い




先程まで明るかった夜空はすっかりと暮れ
月が雲に見え隠れしている


その月が一際 綺麗な円みを帯びていたのを
今でもよく覚えている



黙ってゆっくりと隣を歩く乙葉に何か話題を
ふろうとするが
さっきの乙葉の書いた文字が頭を横切った



『声が出ない』





そんな時だった



乙葉が笑っていた。
顔だけで笑う彼女がいた。


「えっと・・・・・どうかしたの?」



それを聞いて、乙葉はスラスラと書き始める




『あんな無茶して、葛城君って結構考え無しなんだね。
でも、本当に嬉しかった』




考え無しで悪かったな





そういえば乙葉は何事も無く無事だったんだろうか



僕は30秒も経たずにノックアウトだもんな



「そういえばさ・・・・・あれからどうなったの?
何もされなかった!?」



乙葉はまた書き始める。



『私が追い払っちゃったよ、こう見えて
空手黒帯なんだよ』



そう書いてニコッと笑った

すごい綺麗な顔で


っていうか格好悪いな



結局何もできないだけでなく、助けてもらったわけで
僕は、『飛んで火に入る夏の虫』だ




あっ!
という顔をして乙葉はまた書き始める。



『改めて 朝倉乙葉 です。

これからもよろしくお願いします』




「あ、うん。葛城透矢。こちらこそよろしく」




『じゃあ私の家 この公園抜けた先だから
 明日、ここに8時でいいかな』



と、乙葉の文字が訴えている



「え・・・・・何で?」



『だって私の彼氏でしょ?』




・・・・・?



・・・・・・・・・・えええッ!?



「ちょ、ちょっと待って!!
あれ、一応 朝倉さんをかばうために咄嗟に出た
嘘なんだけど・・・・・」



『名前で呼んでください』



ああ・・・・・もう始まっているのか



「乙葉・・・・・ちゃん」





恥ずかしい・・・・・



「じゃなくて!!俺でいいの?彼女今までいた事ないし」



次に僕に見せたメモ帳には・・・・・





『私と付き合って下さい。』



そう書かれていた。





「はい、よろしくお願いします」




すいません、即答です





すいません、可愛いです





それから僕らは、メールアドレスを交換して、別れた。





yozora.jpg

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テーマ : ひとりごと
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